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「オーストラリア生活(医療編)」#2 泌尿器科で出会ったオージー患者たち
Voila!泌尿器科専門医の竹村です。
さて,今回はなかなか日本での泌尿器科診療では遭遇しないような,なんともユニークなオーストラリア人患者たちについて書いてみたいと思います。
その1:ともかくデカい
体のサイズもさることながら泌尿器科医的に特筆すべきは「前立腺」が日本人と比べて大きいことです。
100 ccは当たり前で,200 cc超えもザラです(30 ccが前立腺肥大症の1つの基準)。
経尿道的手術だと一回で完遂できないこともあるため,今となっては日本での施行数が激減している前立腺被膜下摘出術がいまだにおこなわれているのは興味深いですね。
その2:脂肪がかなり分厚い
遺伝なのか食生活なのか分かりませんが,脂肪がとても分厚い患者が多いです。
腹腔鏡手術の最初のステップで,内視鏡挿入時にトロッカーという細い筒を腹腔内に入れて観察するのですが,なんとその20 cmくらいはあるトロッカーを根元まで差し込んでもなお脂肪層の中にトロッカーの先端があった時には手術室に悲壮感が漂いました・・・。
また,皮下脂肪のみならず内臓脂肪も豊富な人が多いため,組織の剥離や重要な構造(血管など)の同定に痩せ型の日本人患者よりも時間がかかることが多いです。
同僚にこの違いについて話をすると,「日本で外科医をやりたい」と本気で羨ましがられるとともに,「日本の外科手術の成績が良好なのは日本人外科医がすごいんじゃなくて日本人患者の体型のおかげだろう」と痛烈なツッコミを喰らうことになります苦笑。
その3:性機能に対する思いが強い
これは個人差も大きいのですが,オージー患者の多くが性機能に強いこだわりを持っている気がします。
前立腺癌の治療方針について外来で話をすると,ほぼ最初に質問されるのは性機能の温存の可否についてです。
日本で同様の説明をすると,癌の再発率だとか平均余命とかを聞かれることの方が多いので,こんなところにも文化の違いが表れています。
また,膀胱全摘時に膣前壁を一部合併切除した70代女性の術後フォローアップ外来では,患者本人は癌が取り切れたことを喜んでいたもののご主人がどうも浮かない顔をされていたのでその理由を聞いてみると,「膣が狭くなったせいで妻との性行為が難しくなった」ということでした。
日本ではいまだに(本当はその必要はないのですが)性についてオープンに語ることについて躊躇われる患者さんが多い中,こうして患者さん達の生の声をたくさん聞けるのは貴重な機会です。
その4:それでも結局はイージーオージー
以上はほんの一例で本当にさまざまな患者さんたちと関わって参りましたが,別れ際には皆さんがたくさんの感謝の気持ちを述べてくれた後に「Have a good day!(オージーのアクセントではグッダイとなります)」と笑顔で固い握手を交わして去っていくのはなんとも心地良いものです。
日本で教育を受けた外国人であっても,専門分野を活かすことで異国の地でも現地の人たちに感謝して貰えるレベルで社会貢献ができることを肌身をもって感じられて幸せです。
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