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オーストラリア生活2023.07.29

「オーストラリア生活(医療編)」#3 外国人フェローの心得

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Voila!泌尿器科専門医の竹村です。

さて今回は私の個人的な経験ベースにはなりますが,外国人フェローとして海外で臨床留学するにあたって重要と思われることをいくつか雑記帳的に列挙したいと思います。


Be first!

初めに海外の多くの医学部は大学院大学(学士相当の大学課程を終えてから入学できる)ということ,また現地の医師たちは幼少期よりプレゼンテーションスキルを磨いていることもあり弁が立つので,チームでのディスカッションや多職種カンファレンスなどでは上下関係などは一切気にすることなく積極的に発言をする人が多いです。

そのような状況下で黙っていても気を利かせて「どう思う?」などと話を振ってくれることはほとんどなく,恐ろしいことに議論に参加しないことは興味がないor何も考えていないと捉えられてしまうのです。

議論が紛糾する真っ只中での折衝的な発言は高度なタイミングや機微を読む能力が必要になるので,個人的なお勧めとしては議論が始まりそうな時に最初に発言することです。

そして,ある程度みんなの意見が出揃った段階で,「初めは⚪︎⚪︎が良いように思われましたが△△が良いという意見もありましたし,××というリスクも鑑みて最終的には患者・家族の意向も確認の上で方針を決定しましょう」などと纏められると完璧です(が,いつもそう思い通りにはいかないものです‥苦笑)。


Be professional!

私が医師として働いてきたカナダおよびオーストラリアはいずれも移民で成り立っている国家です。

ゆえに,外国から来た非ネイティブの医師が診療に当たることに対しても非常に寛容ですが,現地の患者たちが求めているのは医師のバックグラウンドを問わず「プロフェッショナルな診療」です。

満足度の高い診療を提供できた際には最高の賛辞を下さる一方で,何か不満足なところや疑問点をうやむやにしようとすると真逆の評価を下されることになります。

そのため,自分の力量を超えるような案件については自分だけでなんとかしようとせず然るべき上司や同僚の助けを求め,結果的に患者さんにベストな医療を施すことができればそのアレンジメントも含めて信頼を得ることができます。

これはカナダでの話ですが,20代そこそこで刺青ビッシリの強面患者さんが,自分の病気に関連する最新の臨床試験について「各armの詳細,それぞれのarmに何人の患者がenrolされたのか,endpointはどうだったのか」など専門家顔負けの質問を立て続けにしてきた時にはヒヤヒヤしましたが,最終的に説明に満足していただき治療を受ける決断をしていただけた時の達成感はひとしおでした。


専門家集団は個人商店

日本では大学病院では教授,市中病院では部長が大きな権限を持っており,部下の診療方針についてもカンファレンスなどを通じてある程度トップダウンでの均一化が図られていることが多いです。

一方,欧米ではコンサルティング(専門医)になると,自分の患者の治療方針についてはほぼ独立して決定する権限があります(逆に周囲の人が手助けをしたり口出ししたりすることは余程のことがなければあり得ない)。

そのためにコンサルティングになるまでのトレーニングが濃密ですし,特に外科系ではどんな症例に出くわしても動じないくらいの場数が踏めるよう,トレーニングを受けられる候補者の門戸を狭めているのが印象的です。

そして,その狭い門戸に対して海外で専門医を取って横入りする形で濃密なトレーニングの甘い蜜のお裾分けを頂戴できてしまう外国人フェロー枠は実はかなりお買い得だと思うのは僕だけではないはずです☺︎


英語が上手いと言われたら悔しがれ

僕が博士課程の大学院生だった時にオーストラリアに留学した時に「英語はどこで勉強したの?」とか「英語が上手だね」などと褒められるとお世辞でも素直に喜んでいましたが,それはあくまで「外から来たお客様」扱いされていたからだったのではないかと今となっては思います。

現地の医師と同等の給料をいただいて仕事をする以上,医師が非ネイティブだからと言って患者さんに不利益が出ることは許容されないですし,特有のアクセントがあったとしても伝えるべき内容は全て完全に伝える必要がある訳です。

そのような意識を強く持ちながらコミュニケーションを取っていると,その大前提となる英語力について評価されることはほとんどなくなってきます

逆説的になるけれど,僕にとっては英語力を向上させる究極の目標は「英語が上手だね」と言われなくなることなのです。

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