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カナダ生活2022.05.01

「カナダ生活(医療編)」#1 カナダ若手医師の志望動機とがん診療

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Voila!泌尿器科専門医の竹村です。

さて,今回はカナダの臨床医がどんなことを考えながらどんな生活を過ごしているのかについて書いてみようと思います。


外科志望と内科志望の決断の時

まず,日本との決定的な違いはここです。

日本では医学部卒業後に2年間の初期研修を経て専門科を決めます

一方で,カナダでは医学部卒業後に外科あるいは内科のレジデンシーが開始されます

つまり,医学生の間には少なくとも外科医を目指すのか,内科医を目指すのかを決定する訳ですね。

ちなみにカナダでも医学部の学費は高く,卒業時に数千万円相当の借金を抱えていることも珍しくありません。

これが下記の志望動機に影響していることは想像に難くありません。


志望動機ベスト3は?

僕らの元にローテート(一定期間勉強)しに来るレジデントに個人的に聞き込み調査をした結果,彼らの進路の決め手になったと思われる(独断w)要素3選は下記の通りです。

1. QOL(生活の質:内科>>外科)

2. 収入(外科>>内科)

3. 学生時代の研究経験

1と2はある意味表裏一体で,忙しくてもガッツリ稼げる外科医を目指すのかほどほどの忙しさで生活も大事にしたい内科医を目指すのかということです。

ここで注目すべきは診療科によってそんなに収入に差が出るのかということですが,かなりしっかり出ます

日本では診療科に依らず,下手すれば肩書きにすら依らず,ほぼ収入は横並びなのが常識だったので初めは耳を疑いましたが,具体的には2〜3倍ほどは収入に差がついているようです。

泌尿器科も外科系診療科として人気のため,「残念ながらプログラムにマッチせず仕方なく腫瘍内科医になったのよ〜」と言っていた女医さんもいました・・・。

3については一部の優秀な人は学生のうちから臨床研究をおこなって,論文も出して,そのままお世話になったドクターの元で研修もおこなう流れです。

ちなみに日本だと医学生が基礎系の研究室に通うケースが多いですが,こちらではそのような例は少ないですし,PhD(博士号)を持っている医師も極端に少ないです。


がん診療

少なくとも泌尿器がんにおいてはほぼ外来ベースで回っています。

基本的にはがんの診断がついた状態で紹介されてくる患者さんがほとんどのため,追加の検査はほとんど要らず改めて診断および治療の概要を説明して(必要なら吐き気止めのステロイドなど前投薬の処方箋だけ渡して)おしまいです。

日本ならここで入院の手続きを,となるところですがこちらでは初回治療から容赦なく外来通院のみで済ませますし,何も症状がないのに毎週外来に来て貰って採血結果を確認するなんてこともほぼありません

同僚に,日本で導入化学療法はほぼ全例入院でおこなうことや,治療サイクル間に欠かさず外来で採血結果を確認することを話したらむしろ驚かれました。「日本はお金があり余ってるんだね〜」って・・・残念ながらあのような手厚すぎる医療もあいまって(?)日本はすでに借金まみれなのですが苦笑。

「副作用が起きたらどうするの?」って思ったあなたは非常に鋭いです。そこで登場するのがEDです。勃起不全(=Erectile Dysfunction)ではなくて,救急部(Emergency Department)の方です。

EDが24時間365日老若男女・原疾患問わず対応してくれるので,例えば患者さんが輸血やG-CSF注射を要するほどの骨髄抑制を起こした場合でも彼らが迅速かつ確実に対応してくれるのです(日本同様,若手医師は小遣い稼ぎでEDでバイトしていることもある)。

一方でCOVID-19の影響もありEDをはじめとするEMS(救急搬送なども含めた救急サービス全般)の負担増大が社会問題となっており,3-4時間待ちなどもザラになっている現状があります(これについては私自身患者サイドで痛い目に合った経験があるため,またの機会に記載します)。


総じて,日本に比して分業・効率化が進んでいる印象があり,医療者サイドからすると雑務が極端に少なく非常に働きやすい反面,症状発症→家庭医の初診(1-2週間待ち)→画像検査and/or生検(数週間〜1ヶ月待ち)→家庭医から専門医への紹介(受診まで長いと数ヶ月待ち)と,患者サイドからすると医療アクセスの観点から不便さが否めません

日本のように当日飛び込みで専門医を受診できるほどのアクセスの良さは不要と思われますが,カナダでは場合によってはがんの診断が下ってから数ヶ月待たされてしまうことがあるというのはあまりに酷です。

まだまだ私には見えていない現実があるかも知れませんが,とりあえずこちらで臨床医の端くれとして半年ちょっと働いた所感を纏めてみました。

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