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「カナダ生活(学会編)」#2 ESMO2022&Barts Cancer Institute(後半戦:ロンドン)
Voila!泌尿器科専門医の竹村です。
前回記事の続きで,ロンドン滞在を振り返ってみたいと思います。
London市内の移動にはE-bikeがオススメ
以前東京から旅行した際にはあまり気になりませんでしたが,カルガリーで暮らしていると殊更にロンドンが大都会に感じられました。
人がとても多い上に,みんなとても急いでいる印象がありました。歩行者の信号無視は当たり前で,車も歩行者の切れ目が少しでもあればかなりアグレッシブに突っ込んできます。
そして,なんといっても物価が高い!!ユーロスターの着いたSt Pancras International駅からホテルのあったOld Street駅まで10分ちょっとの乗車で6.3ポンド(日本円にして¥1,000超)ですからね・・・。
後で知ったことですが,改札機でチケットを買わずにコンタクトレス・クレジットカードで改札を通過すれば半額くらいで済むようですがそれでも高い(カルガリーでは市街地の電車は無料です)。
さて,そんな中で光明となったのがLimeという電動自転車のシェアサービスです。
アプリ上で簡単に登録を済ませるだけで市内に無数に置かれている自転車を好きな時に乗り回して(一部の駐輪禁止地域外であれば)自由に乗り捨てできるのです。
渋滞知らずなので都心部での移動では車よりも所要時間が大幅に短縮されます。
そんな訳で毎朝の病院への通勤のみならず勤務終了後の散策も自転車でしておりました。
思わぬ課題が降って来た
LondonはBarts Cancer Instituteにて病院研修初日のことです。
突如として教授から言い渡されたのは「当院でとある治験に乗っている患者のデータを集めて最終日にプレゼンテーションしてみないか?」という提案(司令?)でした。
今回は滞在も短く見学生として気楽に構えていたのですが,そうは問屋が卸しませんでした・・・。
ただ,Bartsのがん患者の8割以上が治験症例(!)という恐るべき施設であり,「これだけの貴重な症例データに触れることができることは今ここでしかできない経験かも知れない」と考えました。
しかし,電子カルテの勝手もよく分からない&滞在時間も限られている中でのデータ収集&プレゼンテーションは想像以上にハードなタスクで,連日誰よりも遅くまで居残って電子カルテと睨めっこする羽目に遭いましたとさ苦笑。
イギリスの医療事情
今回滞在したBartsに限らず,イギリスの公的病院で使用可能な薬はかなり厳密に管理されております。
National Institute for Health and Care Excellence(NICE)という公的機関が薬剤の費用対効果を評価しており,ある薬剤が非推奨とされると(特に法的拘束力があるわけではないようですが),病院予算の都合によってその薬剤が実質的に使用不可能になるようです。
そのため,英国ではカナダや日本で当たり前に使用できる治療薬が使えないという現実がありました。
現場の医師はやや自虐的に「NICEのせいでイギリスの医療が世界の潮流から取り残されている」などと文句を言っておりましたが,限りある医療費の財源をより効率的に国民に分配するという意識は我々ももっと見習うべきかも知れません。
エリザベス女王の国葬も
滞在中,9月19日の月曜日が国葬のために臨時の祝日となりました。
週末からバッキンガム宮殿は大変な人の出となりました(国内のみならず海外からもたくさんの人が集まったようです)。
警察も多数配備され,そこかしこで通行止めがおこなわれ,ロンドン中が異様な雰囲気に包まれておりました。
街中には至る所に様々な年代の女王陛下の写真が飾られ,本当に愛されているのだなぁと感じました。
ちなみに,BartsのPCの壁紙も一斉に変更(↓)されておりました。
国葬当日はロンドン駐在中の友人宅にてTV越しに観ただけでしたが,予期せず歴史的な瞬間に立ち会うこととなり感無量でした。
カルガリーが知らず知らずの内に故郷になっていた
実は私は大のイギリス文化/製品好きで,学生時代はNWOBHMというイギリスで勃発した音楽ムーブメントを聴き漁り,大人になってからは英国紳士靴を10足以上買い揃えて家族からは「ムカデ」呼ばわれされていたにも関わらず今回も気がつけばロンドン北部にある,革靴の聖地ともいうべきノーザンプトンを訪れて買い増してしまいました笑。
そんなこんなで長い週末を終えて,ロンドンでの滞在も残りわずかとなりました。
初日に教授から言い渡された治験関連の課題についてもなんとかデータ収集を終えて統計解析も行ない,それなりに知見に富んだプレゼンテーションができました。
大きな達成感のあとに「残された時間でロンドンを徹底的に楽しむぞー♪」となるかと思いきや,不思議とやって来た感情は「あれ,そろそろカルガリーに帰りたいかも?」でした。
今回訪問したパリおよびロンドンはともに活気に溢れていて,歴史に裏打ちされた素晴らしい文化にも触れられる刺激的な都市だったのですが,どうも久しぶりの大都会での生活のせいで知らず知らずのうちに食傷気味になっていたようです。
もう少しだけ寒いけど自然が多くて,道ですれ違う人に気さくに声を掛け合える,そんなカルガリーの生活環境がどうやら今の自分には合っているみたいです。
そんなわけでパリ&ロンドンで大変に充実した時間を過ごせた一方でカルガリーの良さも再認識できた,2週間ちょっとの贅沢小旅行でした。
全面的にサポートして下さった癌治療学会および欧州臨床腫瘍学会の皆様には感謝しかありませんm(_ _)m
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