ブログ
「オーストラリア生活(セットアップ編)」#1 オーストラリア入国までの軌跡
Voila!泌尿器科専門医の竹村です。
いよいよオーストラリアに上陸して留学生活第二章が開幕したものの,この1ヶ月間はちょっと思い出したくないほど質的にも量的にも過酷なタスクに次ぐタスクを乗り越える必要がありました・・・。
戦いはカナダ出国の準備時点から始まったと言えるので,今日は少しだけそんな話をしたいと思います。
借家の保証金返って来ない問題
約1年半ほど入居していたカルガリーはダウンタウンに位置する愛すべき我が家でしたが,予想より早くオーストラリアの就労ビザが許可されたため,その旨を伝えて出国の数日前に退去する運びとなりました。
いつも気さくで優しかった(過去形)カナダ人大家に連絡をして,一度ウォークスルーをしていただくことになりました。
すると見慣れない男(内装屋)を1人連れて来て,いつになく入念に部屋をチェックしておりました。
そこで二人が相談した上で突然告げられたのは,
「壁を全面(!)塗り直す必要があるし,ブラインドや扉などに大規模な工事が必要だ。1万ドル近くかかるかも知れないが,これは借主の責任だ(?)」
という衝撃の言葉でした。
入居時から既に数多く存在していた傷やら汚れやら(我々は初めてのテナントではなかった)を棚に上げて,我々の全額負担で新居並にリフォームしようとしているのは,「今後は家を貸すのではなく売りに出そうと思っている」と言っていた大家の魂胆が見えみえでした。
妻がアルバータ州の法律に則り緻密な交渉を展開し,さらに現地で不動産会社を経営するカナダ人の友人の助けも借りて,入居時に支払った保証金(家賃1ヶ月分)を全額渡すという妥協案に落ち着けたのはなんと退去日,出国の数日前のことでした(実はこの一連のやり取りがオーストラリア入国後にも尾を引くことになろうとは思いもしませんでしたが,その話は長くなるのでまた次回にでもさせていただきます苦笑)。
聞くところによると,海外に出ていく借主は足元を見られて大家に粘られて保証金が返ってこないケースが後を絶たないとか。
今後海外で家を借りる予定の方は,退去時に海外に出ることはあえて言わない方が得策かと思います(今回の大家のように出国直前までいちゃもんを付けられるケース以外にも,「後で小切手を国際郵便で送る」と言われたものの待てど暮らせど小切手は届かず,しれっと「確かに送ったから郵便事故でしょう」などと言い逃れされて泣き寝入りになることも多いそうですよ)。
マイカー売却時の罠(scamに注意!)
上記のゴタゴタと並行しながらカナダでの生活の足とも言うべき自家用車の売却の準備を進めておりました。
ディーラーで売るのが早くて確実な反面どうしても売値が低くなるため,まずは個人売買をトライしてみることに。
カナダで最もポピュラーな車の個人売買サイトはなんと言ってもfacebookのマーケットプレイスです。
その他,kijijiなどの専門サイトがあります。
ディーラー見積もり価格よりも5000ドル増しくらいの強気な価格設定にしたものの,kijiji経由で購入希望者からの連絡がどんどんやって来ました。
「明日にでも見に行きたい」
「仕事のシフトを替えてもらったからすぐにでも現物を確認したい」
と言ったかなり積極的なものです。
「これは案外簡単に売れるかも知れないぞ」
と気を良くしていると,購入希望者からはすかさず
「修理歴や事故歴などの証明書を送って欲しい」
と依頼がありました。
調べると州の公式サイトから20ドル程度でVehicle Information Report (VIR)がダウンロードできたので,そこでダウンロードした書類を送ると
「それではなく特定のサイトから入手したものを送って欲しい」
と丁寧にリンクまで添えて返信が来たのでした。
こちらのレポートは上記の州発行のものより少し高額で40ドルほど手数料がかかるものでしたが,
「詳細情報が記載されているから高いのかな?まぁ車の売値を考えれば必要経費だろう」
と深く考えもせずにレポート購入→購入希望者に送付した途端,それまで迅速だった返信が突然途絶えました・・・。
すると立て続けに,他の購入希望者からも同様のメールが届いたので,おかしいと思って調べてみるとこれは典型的な詐欺の手口だったことを知りました!!
40ドルの被害はまだしもそこで入力したクレジットカード情報から二次被害が生じる可能性を危惧してクレジットカードを止めざるを得なくなり,出国間近で物入りな時期に大変不便な生活を強いられることとなってしまいました。
最終的には,そんなこんなで困っていた僕のことを見ていた職場の精巣がん専門Nurse practitionerの旦那さんがちょうど車の買い替えを検討していたことを教えて貰い,仲介業者を挟まないことでお互いWin-Winの個人売買が成立したので一件落着でした。
最後の最後で気が抜けないなんとも綱渡りの車売却でしたが,ちゃんとそう言う心理状態の人が引っ掛かりやすいところに詐欺師ってものはそつなく網を張っているので本当に困ったものです。
ロングフライトが案外貴重な休息時間だった件
そんな苦労を見かねた直属の上司がせめてフライトだけでも快適に過ごせるようにと,Air Canadaの上級会員ステータスの権利を我々のフライトに譲渡してくれました。
「預け荷物1人3つまで無料,優先搭乗,ラウンジ利用」という子連れの引越しには有難い特典ばかりでした。
出国の時には惜別の感情なんかよりも,ともかくカナダ生活を土壇場で折り畳めた安堵感と疲労感のみでグッタリでしたが,深夜発のフライトだったこともあり前半は幸い子供もよく眠ってくれました。
子供の起床後は日本から持参していた秘伝の(?)漢方薬で暴れん坊の子供もまったり過ごしてくれたのでなんとかかんとか留学生活第二章の舞台であるオーストラリアの大地に足を踏み入れることに成功しました!!
ずっと張り詰めていた時間の中,束の間の休息が取れたそんな意外な17時間のフライトでした。
留学生活第一章(カナダ)を振り返ってみて
上記は氷山の一角で,日本でずっと平和に暮らしていたら経験しないで済むような気苦労が絶えませんでしたが,試行錯誤の中で打たれ強くなれるのも海外生活の醍醐味と思います(怪我の功名で家族の絆も深まりました)。
正直堪えられない人には堪えられないレベルの猛烈なストレスが降り掛かりますし,私自身もオーストラリア入国後には輪をかけた数多なる困難に立ち向かう羽目に遭うこととなり,幾度となく心が折れそうになるほどギリギリの精神状態に追い詰められました。
もちろんそれを補って余りある収穫が海外留学にはあると思っていますが,それは単に自分達の労力を正当化しているだけでもっとスマートな方法があるかも知れません汗。
そんな訳で「医師の海外留学,決して万人にお勧めできるものでもないかも知れないなぁ」というのが,現時点での率直な感想で御座います。
それでもなお,熱い気持ちを日本国内で持て余して,海外留学を希望されている方のためにもしも何かお力になれることがあればお喜んで手伝いしたいと思います(こちらのフォームからでもお気軽にご連絡下さいませ)。
最新ブログ
-
留学準備2024.09.22「留学医師ライブ」に出演させていただきました
-
臨床研究2024.07.06「研究紹介」#4 Prognostic significance of absolute lymphocyte count in patients with metastatic renal cell carcinoma receiving first-line combination immunotherapies
-
臨床研究2024.02.03「研究紹介」#3 Outcomes of Patients with Brain Metastases from Renal Cell Carcinoma Receiving First-line Therapies