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「メタアナリシス」Step 3&4
Voila!泌尿器科専門医の竹村です。
前回記事の続きですが,ここまで来れば型通りにデータを統合するだけなのであまり考えることはないです。
Step 3:メタアナリシス
Cochraneが無償で提供しているReview Managerというツールが秀逸で,必要十分な統計解析機能に加えて論文用のFigureの出力までできてしまいます(https://training.cochrane.org/online-learning/core-software-cochrane-reviews/revman)。
様々なバックグラウンドのデータを統合するにあたって問題となるのは異質性(=heterogeneity)とバイアスの検定です。
異質性については大きく概念的異質性(研究デザインの違いなど)と統計学的異質性(それぞれの研究結果のバラツキ)があります。
概念的異質性については,前回記事のStep 1-2を通して判断することとなります。
統計学的異質性の目安として,コクランの統計量Q(=Cochrane’s Q)およびI統計量(=I2)が用いられますが,いずれも上記RevManで自動的に出力されます。
Cochrane’s QのP値(カイ二乗検定)が0.10(あるいは0.05)を下回るかI2が50%(あるいは25%)を上回った際に「異質性あり」と判断されることが多いようですが,明確な基準はなく個別の判断が求められるようです。
Step 4:バイアスの評価
最終段階として,バイアスの評価をおこないます。
Step 2でおこなったクオリティアセスメントも広義のバイアスの評価ですが,さらに出版バイアスと選択バイアスを評価します。
出版バイアス
ファンネルプロット(Funnel=漏斗)という,X軸に効果量・Y軸に研究の精度(≒サンプルサイズ)をプロットした図が先に紹介したRevManで描かれます。
一般に精度の低い研究(Yが小さい)ほど効果量のばらつきが大きい(Xの幅が広い)ことから,末広がりな二等辺三角形になればバイアスなしと判定できます。
定量的な評価法としてEgger’s testなどの統計学的検定法が提唱されていますが,Nが少ない(10未満)メタアナリシスでは推奨されていません。
選択バイアス
Step 1で事前に適切なInclusion/Exclusion基準を設けておくことで回避できます(恣意的に研究を選別しないことが重要です)。
複数人で研究を遂行することも選択バイアスを減らす上で有用です(むしろ必須とすら言えるかも知れません)。
最後になりましたが,メタアナリシスのような二次研究は正直インターネット環境さえあれば世界中で誰でもできてしまうので,競争がかなり激しい分野です。
競合相手よりも早く研究を遂行するか,競合相手の少ないテーマを発掘するか,その掛け合わせが必要です。
そのためには日頃から幅広くアンテナを張っておくことが大切ですね・・・。
ちなみに私はメタアナリシスの論文が査読に回っている間に,他の研究者に先を越される夢を何回か見てうなされました苦笑。
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