ブログ
「カナダ生活(医療編)」#3 ED(続き)
Voila!泌尿器科専門医の竹村です。
さて,前回記事の続きです。
2歳男児 急性腹症(疑い)
さて,救急外来(ED)でトリアージを済ませた後に,嘔吐リスクありと判断されたため赤い札を持たされて感染リスクの高い患者専用のレッドエリアで待機することに。
散々待たされた息子はここでぐったり・・・するかと思いきや,むしろ真新しい環境に興味津々の様子でその瞳は爛々と輝き出し,遂にはベビーカーに収まらずにスタスタ歩き出す次第。
その頃にはどう考えても重症感がなくなっており,さらに歩くたびに「愛想」だけではなくお尻からブリブリと「ガス」をばら撒いている気配がするではないか・・・苦笑。
念のために,家で著しく硬く膨隆していた腹部を再度触れてみると,「あれ・・・ぺっちゃんこになっている⁉︎」。
ここで医師の端くれの私は全てを悟り,多忙な救急医の手を煩わせることなく診察をキャンセルして帰路に就こうとしたところでタイミング悪く診察の順番が回って来てしまいました。
「なんで来たの?」と顔に書いてある救急医も,我々も,苦笑いの展開でした。
簡単な身体診察だけしたら,当然レントゲンなども一切撮ることなく処方もなく帰宅の流れです。
夕方に食べさせ過ぎた焼き芋が原因と思われます汗。便秘に注意!
あろうことか,自らが不要不急の受診によりこの街のEDの長い待ち時間の片棒を担いでしまったことを心から反省した夜でした。
しかしながら,家での息子の著しい腹の張り具合と激しい啼泣を見たらやはり最悪の事態を想定して病院に連れて行きたくなるのが親心かも知れません(?)。
夜間EDの不思議な来客
夜間救急外来(ED)は野戦病院のような風景であることは日本でも多くの急性期病院変わらないかも知れませんが,ここカナダでは夜になると不思議な来客が来ます。
彼らはEDを受診するにしては明らかに多過ぎる荷物を抱えてやって来ます(長期海外旅行用の特大スーツケース+ボストンバックなど)。
一見すると具合も悪くなさそうで,セキュリティに不要な荷物を玄関に置いてから入るよう指示をされる彼らはそのままEDの長蛇の列に加わることなく奥の事務所に直行してはなにやら話し込んだと思ったら飲食物を渡されて満足そうに帰ってゆきます。
同様にまた別の来客が来てはまた飲食物を渡されて,と一定時間ごとにやって来る彼らはそう,ホームレスなのです。
患者さんのみならずホームレスまでもをひっきりなしに受け入れるEDはまさに究極の社会福祉事業といえるかも知れません。
なお,ここカルガリーではホームレス達も非常にフレンドリーで,特に子供と歩いていると笑顔で手を振ってくれたり気の利いた言葉をかけてくれたりすることに当初は戸惑いました。
実際には通行人がホームレスが会話したり,その流れで小銭や紙幣を恵むことが日本に比べて圧倒的に多かったりと,社会の中である程度共存している印象があります。
薬物中毒の闇
ケースバイケースではありますが,ホームレスの中には安全で食事なども保障される政府が提供するシェルターに入らずに険しい自活の道を選ぶ人達が少なからず居て,彼らの目的は多くの場合違法薬物の使用のようです(シェルター内では薬物使用が厳しく監視されているため)。
我々が日常診療の中でも,「酒・タバコ」の使用歴に加えて「Recreational drug(主に麻薬)」の使用歴を聴取する(そして一定の割合で現役のヘビーユーザーに遭遇する)ことを教育されていることからも,カナダ社会のドラッグ汚染が垣間見える訳です。
バンクーバーにもとある有名なジャンキー・ストリートがありますが,治安向上のためにこれを駆逐しようとするとむしろシティ全域に薬物中毒者が蔓延ってしまい,かえって治安が悪くなってしまうことが懸念されるために一箇所に集結させているような深い事情があるようです。
大麻が合法化されておりがん患者さんから食欲増進目的に処方依頼をされることもありますが,これについては専用のクリニックを紹介して対応しています。
最新ブログ
-
留学準備2024.09.22「留学医師ライブ」に出演させていただきました
-
臨床研究2024.07.06「研究紹介」#4 Prognostic significance of absolute lymphocyte count in patients with metastatic renal cell carcinoma receiving first-line combination immunotherapies
-
臨床研究2024.02.03「研究紹介」#3 Outcomes of Patients with Brain Metastases from Renal Cell Carcinoma Receiving First-line Therapies