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「留学準備(英語試験編)」#3 IELTS Writing/Speaking
Voila!泌尿器科専門医の竹村です。
今回はIELTSの「ライティング」と「スピーキング」の対策についてまとめてみます。
前回記事で述べたように,これらアウトプット系科目は私も含めた純ジャパにとってはなかなかに敷居が高いです。
その理由は我々非ネイティブにとっては「文法的には正しくても不自然な英語表現」が存在することがしばしば盲点となるためです。これは,英語初学者よりもむしろ英語に慣れ親しんで多様な単語・文法をある程度自分で組み立てられるようになった頃に陥りがちなピットフォールな気がします。
私は最初これに気が付かずに「ともかく習うより慣れろだ」と,独学でアスク出版のこちらの書籍のみで対策しながら何度も試験に臨みました。現存するアウトプット系科目のIELTS参考書の中では最良と思われる本書から一定の効果は得られたものの,もう一歩点数が伸び悩んでおりました。
すでにインプット系科目(「リスニング」および「リーディング」)では7.5点を下回ることがなくなっていたので,意を決して「ライティング」でネイティブによる添削指導を受けることにしました。
結果的にこの第三者から受ける指導が圧倒的に効率的でしたのでそれぞれのアウトプット系科目の試験概要と合わせて共有したいと思います。
Writing
60分でTask 1とTask 2が与えられますが,Task 2の比重が重いので目安として20分弱と40分強と時間を配分するのが良いでしょう。
Task 1
与えられたグラフ・フローチャート・地図などを読み解いて,客観的な情報のみを150 words以上で記述します。
注意点としてはあくまで主観を挟まず,与えられた情報だけを元に淡々と過不足なく情報を文字に起こすことです。
なるべく多様な表現を使うのも有効です(例:減少する=decline, decrease, drop, go down, show a downward trend, etc...)。
Task 2
与えられたテーマについて,ショートエッセイの形で250 words以上で記述します。
何よりも大切なことは何が問われているのかを確実に把握して,それに沿った解答を作成することです。
例えば「Do you agree or disagree~」に対しては立場を明確にして片方だけ議論すれば良いのですが,「What are the advantages and disadvantages~」に対しては両方の立場から議論しなくてはなりません。
ここを見誤ってしまうとどんなに内容が立派でも大失点に繋がりますので要注意です。
各Taskについての詳細な対策法については他所に譲りますが,7.0点以上を目指すに当たっては独学では限界があるように感じます。
しかしながら国内の対面IELTS対策コースは軒並み高額(〜数十万円!)であり,仕事・育児・大学院の課題に追われる日々の中で隙間時間を利用しながらお手軽に数をこなしたかったこともあり,IELTSanswers.comによる添削サービスを使用しました。
このサービスの利用料は1回9ドル,4回30ドル,10回70ドルと国内の添削サービスに比して破格のお値段でありながら,採点者目線での的確な添削をいただけるのでコストパフォーマンス抜群で非常にお勧めです。
Speaking
Part 1(一般的な質問),Part 2(フリースピーチ), Part3(Part 2に関連した詳細なディスカッション)から構成されます。
Part 1
カジュアルな日常会話力が問われます。
ここでは演説をする必要はありません。かえってボロが出て減点されるだけですので,2-3文を目安に短く簡潔な回答を心掛けるのが良いでしょう。
Part 2
与えられたテーマに沿ったフリースピーチ力が問われます(1分間の準備に引き続いて2分間フリースピーチ)。
慣れない内はここで上手く話が膨らませられずに時間内に終了してしまい沈黙してしまったり,逆に本筋と関係ないところに時間を使ってしまい時間切れになってしまったりしてしまいがちです。
下記の4ステップで構成すれば1.5〜2分くらいで収まるはずです。
1. 導入(立場を明確に述べる←日本語では結論を最後に述べることが多いですが,英語では最初に明示しないと伝わりにくくなるようです)
2. 例示(自分の経験や他人の話など,作り話でも良いので1-2個の例を述べる)
3. 意見(2. を受けて自分がどう考えるかについて,一般化した意見を述べる)
4. 結論(1. を言い換えする形で述べたり,未来への展望を述べたりしながらまとめましょう)
Part 3
Part 2に沿う形で抽象的な内容まで含めたディスカッション力が問われます。
試験官によってツッコミの度合いが違いますが,ここでも質問に対して具体例を引用しながら話すことができると時間も程よく掛けながら説得力を持たせることができるので有効です。
また,解答にはPart 2から通して論理的一貫性が求められるので,試験官の質問に圧倒されて自分のポジションが変わってしまうことのないように,可能ならばPart 2の時点から都合の良い作り話ではなくてはじめから本音で語れるようになると盤石かと思います。
さてこれまで3回の記事に分けて多くの日本人医師にとって臨床留学に際して律速段階(あるいは諦めてしまう要因)となるIELTS対策についてまとめてみました。
私はこれらの方法論に則って4回目のIELTS受験で英連邦で働くための基準点をクリアできましたが,3回目と4回目の「リスニング」で大問の内の1つが全く同じという幸運にも恵まれました(初回試験では6.0点と全コンポーネント中で最低点だった「リスニング」が,4回目試験では運も味方に付けてほぼ満点の8.5点を達成できました☺︎)。
「たかがIELTSされどIELTS」で,この語学試験に通ったからといって異国での診療が難なくできるかといえば,残念ながら全くそんなことは御座いません。されども試験に通らなければ海外で医師として働くチャンスを掴むことはできません。
逆にその切符さえ手にできればあとはOn-the-job Trainingでなんとかなってしまうのもまた事実です(英語はあくまで器に過ぎず,その器に乗せるべき医学知識や患者さんに寄り添う気持ちこそが大切だと感じております)。
私の経験が多忙な臨床業務のさなかにあって臨床留学を目指している方(あるいはIELTSの点数アップが必要な方)の効率的なIELTS対策の一助となれば幸いです。
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